カギ屋の救急車

私が高校生の頃でした。
母と妹の三人で、築50年は経っているであろう公営団地にすんでいました。
古い長屋のような建前で、何度もリフォームされたような家でした。
ある日の日曜日、母と妹の三人でお買い物に出かけ夜の20時頃に帰宅しました。
三人とも重い荷物を両手に抱え、外も気温が低くとても寒い日でした。
ドアの前に立った母は急かせかとカバンの中からドアのカギを取り出し、古いドアのカギを開けようとしたのですが、なかなかドアのカギが思うように開かずに、私と妹も寒いから早く開けてよ!と母を焦らせていました。
母は急いだばかりに、力一杯にカギを回しました。
その瞬間でした。
バキッと大きな音を立てて、カギが真っ二つに折れてしまいました。
カギの半分は、古い鍵穴に入り込んだままになってしまい、スペアのカギも入れられない状態でした。
ここは公営団地。
家主さんなんていないし、日曜日の夜間なので田舎の役所も閉まっており、誰も対応してもらえません。
どうしよう…と寒い外で途方にくれていました。
そんなとき、母があるところへ電話していました。
カギ屋の専門店です。
スペアキーの作製はもちろんのこと、開かなくなったドアなどの対応もしてもらえるとのこと。
日曜日の夜でしたが、すぐに対応可能とのことだったのできてもらいました。
駆けつけて下さったカギ屋さんは、ドアノブごと交換になりますが15分ほどで交換可能とのことだったので、すぐにお願いしました。
新しいカギが取り付けられ、無事に家の中へも入ることが出来ました。
ドアノブごと交換したため、費用もかなりかかってしまいましたが、以前のようにドアの開け閉めに時間がかかることもなくなり、朝の忙しい出勤、通学の時間にもカギの開け閉めでイライラすることがなくなりました。
あのときは、本当に助かったので10年経った今でもあのカギ屋さんのことはよく覚えています。
もしまた同じようなことが起きても、落ち着いてすぐにカギ屋さんへ連絡しようと良い経験になりました。